2023年12月の代表メッセージ

12月の代表メッセージ

☆2023年12月14日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ いじめを訴えたのに「花マル」、なぜこんなことが起きるのか □■

12月に入り、あちこちにイルミネーションが輝いています。
新型コロナが5類に指定されたためか、一般のお宅の庭先にもイルミネーションを見ることが
多くなったように感じます。
街にはクリスマスの雰囲気が漂い、スーパーや百均では鏡餅やお正月飾りが並べられています。
子供たちにとっても心がウキウキするような12月です。

そのような雰囲気がある一方、奈良市のいじめ事件が大きく報道されています。

奈良市立小3年の女子がいじめを受け去年12月にいじめの重大事態に認定されました。
女子児童は、おととしから去年にかけて同級生から足を蹴られてケガをするなどのいじめを受け、
学校側は去年12月、いじめの重大事態に認定しました。
女子児童はその後ストレス障害と診断され、今も症状が続いているといいます。
かなりの数の報道がされていますが、MBS毎日放送の記事を中心に、以下に、まとめてみました。

【経緯】
・2022年2月すねを蹴られて全治1週間の怪我。
被害者は、「急に蹴られた。帰りの準備をしているときに。びっくりした。(Q痛みは?)あった」、
「ロッカーの前に立っていた男子児童に蹴られた」と話している。
目撃していた別の児童は「男子児童は座ったまま蹴っていた」と証言した。
・両親がいじめ有無の調査を学校に要求。
・両親によると「加害児童が『やっていない』と言うし、調査できないということだったんですね。
(学校に)お願いしたんです、調査をしてほしいと。
そしたら『学校は警察じゃない』と言われてしまった」とのこと。
・報告書によると、被害児童の手首をひねったり背中を鉛筆で突いたりなどの
男子児童によるいじめ行為が12件あった。
・2022年6月、被害児童は「自学ノート」に「いやだ」というタイトルで担任に提出。
ノートには、「かなしかった つらかった なみだがこぼれた」、
「わたしは死ねばいいな、自分なんて、いなければよかった」などの言葉が見られる。
・担任が花マルをつけて、「You can do it!! ファイト!!」と記入
・担任は市教委の聞き取りに、
「児童に花丸を付けてほしいと頼まれ、花丸を付けにくい内容であることから一度は断ったが、
児童に頼まれたため、心配していることを伝え花丸を付け、
励ましの意味を込めて、『You can do it!』と記載した」と答えた。
・被害児童本人は、
「(Q花マルを書いてくださいと言った?)言ってない。なんで花マルしてあるんやろうって思った」
と話している。
・担任が両親に連絡したのは自学ノート提出後、約1週間も後のこと。
・2022年9月、被害児童は適応障害に。診断結果を受けて再度、学校にいじめ調査を要望。
11月、同級生全員にアンケート調査が実施され、学校側は「いじめ重大事態」と認定した。
両親が訴え始めてから約9か月後のこと。

この事件に関して奈良市長は
会見で、「具体的な内容の評価は難しいところがあるが、
子どもが言っていることをきちんと聞き取ることが大事だと思う。
当該教員も言い分はあると思うが、子どもの声を最優先するのが大事だと思う。」と話し
改善していく必要があるという考えを示しましたとあります。
なお、奈良市は、今月中に調査報告書を公表するとのことです。
——–

やや長くなりましたが、以上、このいじめ事件の報道をまとめてみました。

最大の問題は、被害者の子が適応障害にまで追い込まれたということです。
その原因は、いじめの訴えがあったにもかかわらず、
教師がいじめを解決しようとしなかったという一点にあります。
「言葉」に対してのセンサーが悪すぎます。
「死にたい」とかかれていたなら、そのノートの前後がどうあれ、
授業を自習にしてでも、すぐに被害児童を呼んで
「どんなことがいやなの。なにかあったの。大丈夫?」などと話を聞くことが必要です。
しかも、保護者からいじめについての訴えを何度も受けていたはずなのに。
この言葉を目にしてから、両親に伝えたのが一週間も経ってからとは、あきれます。
担任本人からしてみたら、「なんでこんな大事になるんだろう」と思っているかもしれませんが、
些細なことをおろそかにしたことが問題なのです。
こんな当たり前のことを教えてくれる先輩や校長、教育委員会の担当者はいなかったのでしょうか。

教師本人の能力の問題もありますが、
教育システムの不備もあると思います。
市教委は担任に聞き取り調査をしたようですが、この担任に対しての懲戒については
言及していない模様です。
「いじめを放置した」のは明らかです。それに対しての懲戒できないのであれば大きな問題です。
私たちが以前より訴えておりますように、いじめ防止対策推進法に「教師への懲戒規定」を
明文化する必要があります。
「いじめを放置」しても教師には全くデメリットがなく、被害者だけが大きな負担を負うという事実は、
異常としか言いようがありません。
この事件で言えば、22年の2月の事件があったときに、すぐに対処し解決していれば
こんな苦しみを味わわなくても良かったのですから。
法制化が間に合わないのであれば、最低でも各教育委員会において、教員の処罰規定の中に
いじめの放置や黙認、加担などをした教員の懲戒規定を盛り込むべきです。

今回の報道を見る限りですが、保護者の皆様にも知っておいていただきたいことがあります。
まずは、「学校は警察ではない」というのは学校が問題から逃げるときの常套文句だということです。
こんな言葉は無視するべきです。
ここまで学校が逃げるのであれば、警察署に被害届を出すべきです。
そこまでする必要がない場合であれば、このような言葉を投げかけられたら、
すぐに学校の上位組織に訴えていくことが肝要です。
公立であれば、「教育委員会」に訴えて解決を依頼することが大切ですし、
実際にかなりの効果があります。
私立であれば、学校法人のトップに話してみていただきたいと思います。
いじめ問題について、いじめを解決する学校が良い学校だという価値観に教育界は変わってきています。
しかし、残念なことに、このような対応をする学校がなくなりません。
私たち保護者としても、どこに持ち込めば解決できるかということを知っておくことも大切だと思います。
(参考 いじめ解決方法 https://mamoro.org/solution )

子供たちにとって楽しい12月。そしてお正月。安心して迎えて欲しいものです。
何か気になることがありましたらご遠慮なくご相談下さい。
皆様が良いお年を迎えられますように。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

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